「伯爵と平凡な娘」
ハロウィンの冒険

上り階段脇にある不思議な扉を押してみる

そっと扉を開くと、さっそく地下へ続く階段がありました。けれどそれほど大仰なものではなく、二、三段で下についてしまうようなものでした。
すこし進むと、そこは細長い空間であることがわかりました。
人が二人並べば、埋まってしまうような細長い部屋。
見れば両脇の壁には所々窪みがあります。
その一つを除きこむと、白い目と目が合ってあなたはちょっとびっくりしました。
しかし後ずさってよく見れば、それは大理石の胸像のようでした。
ドレープというか、襞のたくさんある服を着た、昔の人の肖像のようでした。
それが、この部屋にいくつも並んでいます。
少し視線を落とすと、胸像の台座に文字がありました。


「皇帝Tiberius――神になることを拒み苦悩する人として死んだ」


なんだか、哀しげな文字です。
その隣には気の強そうな髪をひっつめにした女性。それからその向かいには髪にウェーブがかかった優しげな女性がいました。優しげな女性の台座には「我が――のOctavia」とあります。


そして、部屋の行き止まりには、フードを被ったような格好をした男の人の立ち姿の像がありました。
それにしてもヘンテコなフードです。体に巻いた布の端を頭にかぶせているのです。そういえば学校の教科書で、大昔の人がこんな恰好をしていた気がします。
ですが、ヘンテコな格好に似合わず思慮深げな男の人の顔は端正で、映画やドラマに出てきてもおかしくない美男子ともいえました。
ゆるいウェーブのかかった髪や顔つきは、優しげな女性にどことなく似ています。
そしてその足元にはこうありました。


「神君 AVGVSTVS 私が最初に目にした神」


この男の人は神様なんでしょうか? よくわかりません。
――ふとみれば、全ての像の近くに不思議な形のつぼが置いてあります。あなたは少し前にそれを見たことがあるような気がしました。
たしか、この前行った博物館です。
そこにあった展示。
大昔の人は火葬されて、骨壷に入れられたとか。そのとき骨壷を見たのですが、この壷はなんともこれにソックリ!
あなたは慌てて吹き抜けの廊下に戻ることにしました。


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