戻る Home 目次 次へ

「魔法使いと記憶のない騎士」
第十一話
樹海へ
―異種族との遭遇―

翌朝、朝食をとると二人はすぐに出発した。宝妖の都がある樹海まではあと2日、そして樹海の入り口から目指す都までは1日半くらいだとエレオノーラは言った。
街から出る前に、食料などを買い揃えておく。それらを背嚢に詰めてから、二人は街を出た。
しばらく、てくてくと歩く。
「ね、それ重くない?」
エレオノーラはエンキの背中の青竜偃月刀を指差して聞いた。馬鹿でかい得物は刀刃を下に、鈍器とも言える金属がついている柄尻を上にして斜めに背負われている。エンキは右肩に得物、左肩に背嚢を引っ掛けるという形で歩いていた。
「背負ってるから大分楽だよ」
「そう?……それ一体重さ幾らくらいあるの?」
「……持ってみるか?」
エンキは少々抑えた声で言った。エレオノーラはその言葉に立ち止まり、頷く。エンキも立ち止まって、右手で得物の柄を掴んでくいっと引っ張った。職人特製のベルトはそうすると抑えの部分が外れるようになっており、エンキは得物の重さを利用してそれを自分の前に持ってきた。
それから両手でエレオノーラにそれを渡す。しかし、エレオノーラが得物を両手で掴んでも彼は手を離さなかった。
「エンキ?」
「……いいか、離すぞ?」
「?うん」
エレオノーラが頷くと、エンキは三つ数えてからぱっと手を離した。すると、突然ずしりとした重さがエレオノーラの腕を襲った。全く覚悟してなかったので、エレオノーラは思わず後によろめいた。それを見て、エンキが慌てて得物を掴んで引き戻す。するとなんとかエレオノーラは転ばずに、そして得物の下敷きにならずにすんだ。
エレオノーラは得物を掴んだまま言った。
「なに、これ。小さな子どもくらいの重さがあるんじゃない??」
「大きな赤ん坊、でもいいな」
「こんなの振り回すなんて……」
エレオノーラは足を踏ん張ってから、得物を手放した。するとエンキはエレオノーラと間合いを取ってから得物を背中に戻した。エレオノーラは彼の後ろに回り込んで、得物をベルトに止めてやる。
「エンキ意外と怪力なのね?」
「いや、コツさえわかれば簡単なものだよ。……まああんまりお勧めはできない武器だけど……、ありがとう」
エンキはそう言って歩き出した。エレオノーラももちろん歩き出す。
並んで歩く。先日以来、二人は並んで歩くことが多くなった。ふとエレオノーラはエンキの横顔を見上げて、昨夜考えたことを思い出した。
――……都に着いたら、話した方がいいわよね?
そう考えていると、不意にエンキがこちらを向いた。
「……俺の顔に何かついてるか?」
「ううん、なんでもないわ」
「そうか?……前、ちゃんと見てないと転ぶぞ」



二人が向かっている場所は、広大な森の中にある異種の人々の都である。
ただその森はあまりにも広く広がっているために、森とは呼ばれず大陸では樹海と呼ばれている。その森は人を寄せ付けないほどに暗いという。魔物も獣も多いと言う。
けれどその中に唯一、街を作り社会を成しているものたちがあった。異種、と言ったように彼らは人間ではない。人は彼らを"宝妖(ほうよう)"と呼ぶ。
"惑星(ほし)から生まれ、死ぬと木になる"という不可思議な種族である。
しかし、彼らのその姿はあまり人と変わらない。人と同じように体は五体から成り、意志の疎通には声を使う。人と大きく違うのは、額に宝石のように美しい石があることだ。それは"種宝(しゅほう)"と呼ばれるもので、それは彼らの命の源である。彼らの心臓と言えるだろう。
けれどその"種宝"を持つというだけで彼らの成り立ちは、人とはあまりに違う。特殊な鉱脈から同族の手によって掘り出された"種宝"が、死んで木となった先人の(うろ)の中で人の形を得る。人の形を得た"種宝"が、"宝妖"と呼ばれる種族になる。これが"宝妖"の成り立ちだ。"種宝"とは"宝妖"の種とも言えるかもしれない。
……という一連の説明をされて、エンキは少々眉を寄せた。
「つまり、その宝妖とやらは心臓みたいに大事なモノが額についてるっていうわけか。……危なくないか?」
「それもそうなのかも。種宝が砕けたり、壊れたりすると死んでしまうらしいわ。でも種宝ってものすごく硬いから滅多なことでは壊れないらしいけど」
「へぇ……」
エンキはそう言ったあと、右手で顎を撫でた。そして、ポツリと言う。
「実際に会ってみないと想像ができんな……死ぬと木になるっていうのも……」
「種宝ってタネなのよ。彼らは種宝の生命力が尽きると死んで、体は土に還るけど種宝は土に還らず芽を出すんですって」
「――…………さっぱりわからん」
エンキは首をよこに振りながらそう言った。エレオノーラも肩をすくめる。
「私も現場を見たわけじゃないから、信じがたいけれどね。"生きてる"宝妖の知り合いしかいないから」
「……そんなものかな」
「そんなものじゃないかしら」
二人は樹海に向かっててくてく歩いた。



一夜野宿をして、翌日の夕刻に樹海の入り口に辿り着いた。
入り口、と言っても単に樹海の端なだけである。背の高い木が巨人のようにそびえ立ち、平地と樹海とを分けている。その向こうの森は、明らかに暗い。
「……今日はここで一泊するか?」
とエンキは足元の平地を指差した。その仕草をエレオノーラはじっと見て、しばらくの沈黙の後首を振った。――横に。
樹海(なか)に入りましょう」
「入るのか?」
エレオノーラの言葉にエンキは思わず巨木を見上げ、そして木々の間から樹海の内側を覗いた。
「……明るくなってからの方がいいんじゃないか」
樹海の中は、昼でも暗い。そして今、日は沈みかけている。つまりは、頭上を覆う枝の間からわずかに零れてくる光もなくなるということだ。
「なるべく進みたいのよ」
しかしエレオノーラはそんなこと考慮の外だと言わんばかりに告げた。そして、エンキの顔を見上げて小首をかしげる。
「……エンキ、もしかして怖い?」
「こっ」
エンキは思わず反射的に、「怖くない」と言いかけてやめる。見栄を張っても仕方ない。
「……、真っ暗なところで獣や魔物に襲われるのは勘弁だ」
「正直ねぇ」
くすくすとエレオノーラは笑った。そして彼女は背嚢を前に持ってくると、ごそごそと携帯用の小さなランプを取り出した。掌に載るくらいの小さなランプだった。
「エンキのも出してくれるかしら」
言われてエンキも背嚢を前に回して、ランプを探る。取り出したランプは小瓶のようで、なんとも心許ない。使うのは初めてだ。いつも日が落ちる前にテントを張り、夜になれば結界を張って眠っていたからだ。
背嚢を背負いなおしてから、ランプをエレオノーラに渡す。
エレオノーラはそれを受け取ると、ランプシェードをぱかっと開けた。そしてそこからランプの中へ、ふっと息を一つ吹き入れる。するとどうだろう。何もなかったランプの中に炎が点り、炎が放つ光はみるみる大きくなった。エンキがあっけに取られている間に、エレオノーラは自分のランプにも同じことをしていた。
2つのランプが放つ光は、道の上に落ちている小石を見分けられるほどになった。
「これで少しは安心かしら」
そう言いながらエレオノーラはランプを1つエンキに手渡した。小瓶のようなランプにしては、十分すぎる光だった。
「……すごいな」
「このランプ、燃える部分が魔力を持ってるの。さ、入りましょうか」
そう言ってエレオノーラは颯爽と歩き出す。エンキは少々顎を引いて、彼女についていった。



鳥のほとんどは夜、活動しない。なぜなら夜になると目が効かなくなるからだ。夜は獣もほとんど眠る。そのため、樹海の中は不気味な鳴き声で満たされていなかったが、変わりに不吉な静寂の支配下にあった。
下草を撫でていく風の音は、同時に旅人の背中も冷たく撫でていく。
日はすっかり落ちていた。
「――……」
エンキは辺りを警戒しながら歩みを進める。エレオノーラはその半歩前を、ランプをかざしながら歩いていた。
「……ねぇ」
前を行くエレオノーラが口を開いた。
「なんだ」
「何かしゃべらない?」
珍しい申し出だった。道中、二人は二時間や三時間口を訊かないことも多々あったのだ。別に不仲なのではなく、話題がないからだ。そして今も、特に話題はない。
「なぜだ?」
エンキは不審そうな声で尋ねた。エレオノーラがふと立ち止まる。エンキは危うくその背中にぶつかりそうになって、止まる。そしてその背中から、ひょいとエレオノーラを覗き込む。エンキから見れば低い位置にあるエレオノーラの顔は、ランプの光のせいでいつもよりももっと白く見えた。そして何故か、エレオノーラはエンキを見返さない。
「……もしかして怖い?」
まさかな、のニュアンスを滲ませてたずねるとエレオノーラがふいに前進しだした。
どうも図星だったようである。



話題がないので結局二人は無言のまま進んだ。
そして不意に、開けた場所に出た。そこには月光がカーテンのように降り注いでいる。
「ここは……」
エレオノーラが辺りを見回した。エンキはランプを掲げてその場所に踏み込む。
足下に巨木が横たわっていた。エンキはその木の傍らにしゃがみこむ。
「……ここ最近倒れたらしいな。ちょうどいい、ここで今日は休もう。……月も天辺にあるしな」
見上げると、木々の間で銀色に輝く満月が南中していた。

ここ最近、テントを張るのはエンキの仕事になっていた。倒れた巨木の隣に場所を決めると、エンキは得物と背嚢を地面に置きマントを外して袖をまくる。そうして仕事に掛かるのだ。その間、エレオノーラはそれを見守っていることになる。早々に結界を張ることもあるが、今日はそうせず倒れた巨木の上にのぼり腰掛けて見ていることにした。
エンキは手際がいいとエレオノーラは思う。
まず、テントを張るには支柱を立てなければならない。エレオノーラがそれをやると、思いのほか地面が硬くなかなか支柱の場所が定まらないときがある。けれどエンキは地面がどんな状況だろうと素早く支柱を立ててしまう。もちろん彼が男で力があるからだろうが、その場所決めからの行動が全て素早いのだ。
支柱を立てた後は、支柱の中央にあるボタンを押す。すると支柱のてっぺんから三本の棒が飛び出てきて傘の骨組みのように広がる。そしてその骨組みの端から補助の柱が飛び出て地面へと突き刺さる。それに布をかぶせて飛ばないように骨組みや柱と結んでやれば完成である。どこの誰が考えたモノかはわからないが、便利な仕組みである。しかし便利だからといって簡単ではない。ボタンは魔力式ではなくバネ式なので押しが甘いと棒が壊れた傘のような形になったり、補助の柱が途中で止まってしまうこともある。そして布をかぶせるのも容易ではない。
けれどエンキは全てを手際よくこなしてしまう。その手際がなんだか羨ましいし、見ていて飽きないのでエレオノーラは結構な時間であるその間を、薪でも拾っていればいいのにエンキを眺めてすごしてしまう。
それに気づいたエンキが時折、「見ていて楽しいか?」と不思議そうに訊いてくる。事実そうなのでエレオノーラはその質問に頷いている。ちなみに頷かれたエンキもまんざらでもなさそうだった。
だから今日もそうして眺めている。月明かりの下でエンキがテキパキと働いているのが解る。頬杖をついて、それをよく観察する。袖が捲くられて露になった腕は綺麗なものだった。エレオノーラは無意識にエンキの服の下――胴体にある傷のことを考えていた。
視線の先でエンキが動く。また腕が見えた。色の濃い、けれど綺麗な腕だ。それによく鍛えてある。手も綺麗だ。指が長い。全体的に大きい手だが、動きは繊細で――はた、とエレオノーラは自分が妙なことを考えていることに気づいて頭を振った。
――ああ、何考えているのかしら。
エレオノーラは十年に渡り放浪していたため、異性とあまり親しくなることはなかった。
似たような歳の同性と友達になることも稀だった。そのため普通の少女たちが通る道をエレオノーラは通っていなかった。
だから今無意識に考えていたことが世間一般で言う"異性の好む所"の思考に関するものだということも知らないので、なんだかその思考がやましいものに思えて振り払ったのだ。
そしてため息をつく。その時だった。
ヒュッと空気の音がして、ザク、と背後で何かが刺さる音がした。
エレオノーラの思考が一瞬真っ白になる。それは珍しいことだった。"邪王の一族"は常々何か――無駄なことから有益なことまで――無意識に考えている人々でもあるのだ。
そぉっとエレオノーラは背後を振り返った。すると――すぐ近くに短槍が突き立っていた。
「?!」
しかもよく見ると、倒れた巨木にエレオノーラのマントを縫い付けるような形で短槍は突き立っている。
「エレオノーラ?」
エンキが異変に気づいてこちらを見ていた。
「何かいるわ!」
エレオノーラはそう叫ぶと体を捻って短槍に手を伸ばし、それを抜こうとした。だが思いのほかそれはしっかりと深く刺さってしまっているらしくびくともしない。
その間にエンキは得物を拾い上げていた。そしてこちらに小走りにやってこようとした。
だがそれはできなかった。
突然人影がエンキの前に立ちはだかったのだ。
すらりとした姿を持つ、槍を携えた男だった。
エンキは反射的に足を踏ん張り、重心を低くする。そして青竜偃月刀を一振りして、構える。
男がすっと槍の切っ先をエンキに向けた。
月光が翳る。
男の顔は見えない。
「人間……」
男の顔の辺りから声がした。低い警戒心に満ちた声だった。
「何用あってここに立ち入ったか」
「――……」
「用がなければすぐに立ち去られよ」
「――そういうわけにはいかんのでね」
エンキはすっと青竜偃月刀を持ち上げ、カンッと男の槍に当てた。
「――狩人か」
男が言った。男も重心を低くする。どちらも長さを特徴とする得物を持っている。
月が雲から顔を出した。世界は再び月光に満ちる。
男の額あたりに、鉱物が光っているかのような不自然な緑色の照り返しがあった。額に、宝石のようなものがはまっているのだ……それはつまり。
「……あんた、宝妖か?」
男の答えは、槍の一突きだった。エンキはそれを避けると、得物を振り上げた。
同じ長さを特徴とする武器であっても、青竜偃月刀と槍ではその使い方はまるで違った。
槍は突きを主体とする武器だ。一方青竜偃月刀は重さを利用して振り下ろし、モノを絶つ武器だ。
槍を突き出したがために男の上方にできた隙を見逃さず、エンキはそこに得物を振り下ろす。しかし男の反応は早く、重いために遅い動きの青竜偃月刀の下からスルリと逃げ出す。
エンキの右手に逃げた男は、エンキの腹めがけて再び槍を突き出す。エンキは柄尻の鈍器の部分をつかってそれを跳ね返す。男が飛びのき、エンキは向き直る。
しばしの対峙。
男が右足に体重を乗せる。それを見て、エンキも軸足に力を込める。――そして、男が向かってくるためにと体重を移動させようとしたときだった。


パン!


小気味いい手を打つ音が、辺りに木霊した。
それからもう一度、先程よりも強く。


パンッ!


その音のせいか、見る間に男の戦意が喪失されていくのがエンキにもわかった。エンキは警戒を怠らないものの、得物を下ろした。


パン。


三度の音の中で一番優しい音がした。
そして、どこからともなく声がした。


「ギィグランダ、武器を下ろしなさい」
鈴の鳴るような美しい女の声だった。
ギィグランダ、というのが男の名前らしい。男は声にしたがって、槍を地面に突き立てた。
すると、二人の左手の樹海から声の主が姿を現した。
髪の長い女だった。
初めは女が月光に融けているのかとエンキは思った。女は月光と同じ、美しい銀の髪をしていた。そして、額に紫色の宝石のような……
――"種宝"。宝妖か。
背は高くないが、存在感のある人だった。やわらかな、けれど逆らいがたい雰囲気も纏っている。彼女の額にある紫の種宝は高貴さの光を放っている。その種宝に相応しい雰囲気を彼女は纏っているのだとエンキは思った。
そのまま、女はエンキに歩み寄る。そして深々と頭を下げた。その動作は無駄がなく美しい。
「私の武官が無礼を。お許しください」
「――……」
エンキは呆然として女を見下ろしていた。人とほとんど変わらない姿。しかし額に、宝妖であるしるしとして紫色(アメジスト)の石がある。そして耳が少々、古に去った種族に似て尖がっていることにも気づいた。
女は顔を上げてにこりとエンキに微笑みかけたあと、くるりと振り返った。その先には、緑色(エメラルド)の石が額にはまった男がいる。槍の持ち主である。
男はかしこまるかのように体を小さくした。それを見て、女は言う。
「ギィ、よく見なさい。さっき貴方が短槍を放ったのはエレオノーラですよ」
女の声には非難の色があった。しかしそのことより、女が"エレオノーラ"と言ったことにエンキは驚いていた。
<神聖なる日光が降り注ぐ日に生まれた娘>(エルファマナーラ)ね!」
その声はエレオノーラにも届いたらしい。彼女は嬉しそうな声を出していた。
「そうよ」
「じゃあエンキと戦ってたのが<大きな地鳴りのする日に生まれた息子>(ギィグランダ)というわけね」
「そうなるわねぇ」
そんな女二人の会話に、男の宝妖はすっかりたじろいでいた。おろおろと辺りを見渡したあと、足早にエレオノーラに駆け寄って、彼女を押さえつけていた短槍を引き抜いた。
「エレオノーラ?」
男は戸惑った声でエレオノーラの名前を呼んだ後、そのままの語調で付け加える。
「すっかり大きくなってしまって。僕、気づきませんで。申し訳ない……」
エレオノーラはとん、と巨木から下りた。そしてマントをつまむ。
「それはいいんだけど……穴が空いてしまったわ」
「……弁償します……」
男は先程の戦意もどこへやら、すっかりしょげてしまっている。エレオノーラは苦笑していた。エルファマナーラと呼ばれた宝妖の女も苦笑している。それに気づいて、エレオノーラと男も女のもとにやってきた。
「久しぶりね、エル」
「エレは元気だった?」
「もちろん」
親しげに挨拶を交し合う女たちの横でギィグランダはすっかり小さくなっていた。
そして、そこから少し離れたところで人間の男――エンキが言った。
「……展開が読めないので、誰か説明してもらいたいんだが」
自分を置いている三人を見回しながら言ったエンキの言葉の戸惑いにエレオノーラは気づいた。
「ええと……」
「ああ、そういえば!」
エルファマナーラと呼ばれた紫の種宝を持つ女は、エンキを見てパンと手を鳴らした。
――さっきの音は、このひとだったのか。
エンキがそう考えていると、エルファマナーラがにこりとした。そして、言う。
「あなた、エレの交配相手でしょう?」
しばし沈黙の霜が下りる。
「――はぁ?!」
後日エンキは、宝妖の第一印象は「"非常に無礼"だった」と答えたという。

戻る  Home  目次  次へ