「伯爵と平凡な娘」
ハロウィンの冒険

プロローグ

とある街のとある年のハロウィンのこと。
あなたは友達と、いつもの年のように家々を回って、
「お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!」
と、お菓子をもらっていました。


そしてしばらくすると、友達の一人が言いました。
「なぁ、吸血鬼のお屋敷に行こうぜ!」
吸血鬼のお屋敷とは、街のはずれ、海にせり出す断崖絶壁にある古い古いお屋敷の事です。
街ができるずっと前、街にある古い古い大学が出来る前からあったというそのお屋敷には吸血鬼が住んでいると言われているのです。
他の友達はしばし顔を見合わせましたが、まず男の子たちがそれに賛成し、次に度胸のある女の子がそれについていくことにしました。
残りのちょっと臆病な男の子と大人しい女の子も、興味を惹かれたのかいつの間にか列に加わっていました。
あなたもちょっと迷ったけれど、ついていくことにしました。
お母さんたちの監視の目をかいくぐり、ちょっと歩き疲れたところで海の波が崖にぶつかる音が聞こえてきて、向こうにお屋敷が見えてきました。
近づけば蔦がのたうつレンガの壁。そこをずっとたどっていけば、鉄が黒々と光る門扉に辿り着きました。
あなたがどうしたらいいのだろうと思っていると、誰かがインターフォンを見つけたようです。
ピンポーン、とやや聞きなれた音とおどろおどろしい感じのする壁と門のギャップに拍子抜けしたみんなですがすぐにお返事が返ってきました。
「どちら様ですか?」
優しげなおじいさんの声に
「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ!」
とみんなが叫びました。するとインターフォンの向こうでかすかに笑う気配がしました。
「なるほど、それは大変です。お菓子の用意をいたしますから、どうぞ中へお入りください」
すると次の瞬間、ギギギと音がして真黒な鉄の門が開き始めました。あなたも皆もすこしびっくりして、後ずさりました。ガコン、と音がして門が止まると、まず煉瓦敷きの道がありその両脇には色づいた木や秋の花がたくさん。とても立派な庭です。色づいた庭に女の子たちは歓声をあげました。
そしてそのずっと向こうに大きなお屋敷が見えます。男の子たちは肩をそびやかして、立派な庭を突っ切る煉瓦の道に足を踏み出しました。
庭のあちこちには、石造りのアーチや、噴水まであります。蔦ののた打つ外の塀からは考えられないほど綺麗で整えられています。
あなたがキョロキョロと庭を観察しているうちに、お屋敷の玄関にみんなで辿り着きました。
なんて大きなお屋敷。あなたのお家の何百倍もありそうです。
誰かが背伸びをして、ノッカーをゴン、ゴンと二度鳴らしました。すると以外にも重そうな扉はスムーズに音も立てずに開きました。
扉の内側には、スーツを着た優しげなおじいさんがいました。
「さあ、よくいらっしゃいました。こちらへどうぞ」
先ほどのインターフォンの人のようです。誰かがあなたが伯爵さまですか、と聞きました。するとおじいさんは苦笑した。
「いいえ、わたくしはこの家の執事にございます」
と答えてくれました。
執事の人が案内してくれたのは、立派な客間のようでした。大きなグランドピアノに見たこともない装飾の食器棚。とても大きなソファと綺麗に磨かれたテーブル。みんなちょっと恐縮したようですが、部屋で待っていてくれたらしいメイド姿のおばさんが
「さ! 皆さんお座りなさいな!」
と言うのでその通りにしました。すると、メイドのおばさんの後ろから幾人かのメイドさんたちがまた現れてみんなの前にケーキとミルクを置いてくれました。
「さあ、お化けさんたち! マーサお手製のケーキと美味しいミルクですよ! これでイタズラは勘弁してくださいませね!」
言われてみんなは大喜びで、ケーキのお皿へ手を伸ばしました。


さて、ケーキも食べ終わった頃。
あなたはなんだかトイレに行きたくなりました。
いつの間にか執事とメイドのおばさんはいなかったので、お皿を片づけてくれている若いメイドさんに聞くと、トイレの場所を教えてくれました。
そして、ひと心地がついた後。
広い広い廊下へ出ると、あなたはどちらから来たのかわからなくなってしまいました。
さて、どうしましょう。
どうやらこのお屋敷には、吸血鬼ではなく人がたくさんいるようですし、歩いていれば誰かにあえてみんなのところに連れて行ってくれるかもしれません。
まずは歩いてみることにしました。
辿り着いたのは、階段のある吹き抜けでした。
この先はいくつかの道があるようです。

さて、ここから先はどこへ行きましょう?

吹き抜けの隅にあるの小さな扉へ  いい匂いのする廊下へ

玄関と思われる方向  階段を上ってみる

上り階段脇にある不思議な扉を押してみる

正面の扉へ


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